最近話題になっているユーザー車検。
以下は私が1995/11/20に行った、ユーザー車検の記録です。
さあ、みんなでユーザー車検しませう。
prologue
あれはいつのことだっただろう、、、そうあれは確か10月の終り、、
いや、11月に入って間もない頃だったはずだ。
「ん?、そろそろ車検だ、、、」
思い出した途端、私はいきなり強い焦燥感に襲われた。今回はユーザー車検にチャレ
ンジしようとは思っていたものの、何も準備をしていなかったのだ。
ヤバイ、確か車検よりも先に構造変更の資料を堤出せねばならないはずだ。今から間
に合うのか?
私はすぐさま友人に連絡を取り、それの審査に1週間から10日掛かることを知った。
良かった。車検の期限までにあと4週間はある。どうやら間に合いそうだ。
私のユーザー車検への道は、恐らくこの瞬間から始まったのであろう。
chapter1 「構造変更申請書類って大変」
構造変更申請の為、陸運支局に出発する当日、私は大変なことに気が付いた。
なんと、浜松陸運支局がどこにあるのか知らなかったのだ。
この日まで知らないことに気付かなかったのが信じられない。まったくバカな男だ。
珍しく自責の念に駆られた私であったが、立ち直りは早いほうだ。どうにか辿り着く
ことに成功した。
いよいよ陸運支局に到着。時計は10時ちょうどを差していた。
緊張して受付に進み寄る。
「あのぉ〜、すみません、改造の申請に来たんですけど必要な書類はどれですか?
(極めて低姿勢)」
「第一号様式、第二号様式っていうやつを、あそこ(陸運支局の外)で売ってるから
そこで買って書類に書き込んでからここに持ってきて」
思ったよりも親切である。これは結構楽勝かもしれない。
さて、100円で2枚の書類を買った私はそれを眺めてみた。
そしてそのまま固まった。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
む、むずかし過ぎる、、、、。
私は書き方の教えを乞うためにいそいで陸運支局に戻った。
陸運支局の昼休みは11:30〜13:00までと無駄に長いので、早くしないと午後も会社
を休まねばならなくなる。
「書きかたが分からないんですけど」
「この記入例見ながら書いて。この部分のデータはディーラーにでも行って聞いて
みてよ。」
「えっ、ディーラー、、、」
そんなあ、ディーラーまで行ってた日にゃあ午後も休まにゃ〜いかんやんかぁ〜、
見捨てないで教えてくれよぉ〜、頼むよぉ〜!!
そんな心の叫びなど聞こえるはずもなく、私は背中に哀愁を漂わせつつ陸運支局の
ドアを押したのであった。
chapter2 「ようやく書類揃う?」
ディーラーに到着した私は、とりあえず相談することにした。
「あのぉ〜、すみません、今改造申請をやってるんですけど、ここの数値が分から
ないもので、教えて欲しいんですが。」
一見、無愛想な男が応対に出てくれたが、実はナイスガイであった。
彼は資料から必要な数値を一緒になって探してくれたのだ。やはり人は見た目で判断
してはいけない。
さて、そうは言っても順調に書類が作成できたわけではなかった。記入例を解読した
り、計算したりと結構な時間が掛かったのだ。 (今読み返せば決して難しいことをやっ
ているわけではないのだが) そうこうしているうちに時計は12:00を回っていた。
書類が完成したので例の無愛想な男に礼を言ってから外へ出た。あとは第2号様式の
コピーを取って (これだけは2部堤出だと陸運支局で聞いていた) 、バネの強度検討書
とともに堤出すれば終わりのはずであるが、既に午後の有休は決定的となっていた。
コンビニでコピーを取り、会社に電話をしてから陸運支局へと向かった。
chapter3 「聞いてないよぉ〜」
午後1時までの時間を陸運支局のソファーでつぶした私は、開始のチャイムと同時に
窓口に並んでいた。
「書類を持ってきたんですけど、これでよいですか?」
「強度検討書がもう1部ないよ、それにここ訂正してるからこの書類はダメだよ。
修正液で消してコピーとるかもう1回書き直すかして」
え〜、聞いてないよそんなことぉ、2部要るのは第2様式だけじゃないのぉ〜、もー、
最初から言ってくれよー、まったく。と心では思いつつ
「ああ、そうですか、これを2部ですね?」
と笑顔で愛想良く答えてしまうところが小市民である。
仕方なく先程のコンビニへ行き、コピーを終えて戻って来たのは2時過ぎであった。
「あの、コピーしてきましたけど」
「えーと、うん、いいよ。それじゃあねえ、そこのノートに名前書いてから帰って。
一週間くらいしたら審査が下りてるかどうかを電話で確認してね」
やれやれ、どうにか終わったらしい。私はノートに書いてあった自分の審査番号をメモ
した。 (電話で審査結果を確認するときに番号を告げて教えてもらうので覚えていない
と痛い目にあうことになる) そしてとりあえず車検本番に備えて、必要書類の入手とラ
インの見学を行ってから帰路についた。ここまではパーフェクトだ、私は自信に満ち溢
れていた。
書類を堤出して6日目。
「モシモシ陸運支局だけどねえ、車検証のコピーが堤出されてないよ」
え〜、聞いてないよぉ〜!
chapter4 「車検前準備もあるよん」
車検証のコピーを faxで許してもらった私は車検前にしなければいけないことを考え
てみた。改造申請書類の合否確認、車検場の予約、定期点検、下回り洗浄、、、この
くらいであろうか。
まず改造申請書類の合否確認であるが、これは電話で確認した。合格であったので、
まずは一安心である。
次に車検場の予約、これも確認の電話の際に一緒に予約した。Xデーは11/20の
午後に決定だ。いやがおうにも気分は盛り上がる。
定期点検は週末や平日の夜などの空き時間に少しずつ行った。やれるところは全て
点検したのだが、分からないところも数ヶ所あった。そういうところは適当に付けて
しまったのだが、車検では整備点検簿をあまり見ないらしいし、どうせ本番でチェック
してくれるはずなので、OKとした。
あとは下回り洗浄であるが、これは早めにやっても雨が降ったらまた汚れてしまうの
で当日の午前中にやることにした。
決まってしまえば、あとは寝て待てばいい。時計はゆっくりとそして正確に、時を刻
んでいた。11/20に向かって、、、
chapter5 「いよいよ当日」
朝だ。何かをやる日の朝というのはとても気持ちが良い。私は期待を胸にカーテンを
開け放った。さぞかし外は晴れ渡っ、、、、、雨だ、、、、、しかも狂ったように降り
まくっている、、、、、なにもこんなに降らなくても、、、、、、、、、、、、、。
い、いかん、落ちつけ、出だしから暗い気持ちになるのはよくない。
とりあえず朝食でも食べるとしよう。
朝食を食べ終わってすっかり落ちつきを取り戻した私は、昨晩用意した持ち物を再度
チェックした。印鑑、シャープペンシル、ボールペン、車検証、自賠責保険証明書、
納税証明書、定期点検簿、それに前回陸運支局に行ったときに持ち帰った重量税納付
書、手数料納付書、自動車検査票 (構造変更なので新規用) 。うーん完璧だ。そろそろ
行くとしよう。
検査は午後からなので昼から行けばよいのだが、初めてのことなので念には念を入れ
て一日有休を取り、朝から出向いた。途中でガソリンを入れつつ、陸運支局に着いた
のは10:30過ぎのことだった。
chapter6 「もうすぐだよぉ〜」
さて、陸運支局に着いてまずすることは必要書類作成である。しかし、前回来たとき
に持って帰った分については家で書いておいたし、自賠責も前もって入っていたので
気分的に結構楽であった。あと必要なものは重量税と手数料の印紙、それに構造等変
更検査申請書である。 印紙は重量税が\25200、手数料(ライン使用料)が\1500 で
あった。ちなみに構造変更検査を受ける場合には、後で車重を計って重量が変わるの
だが、とりあえず車検証に書いてある重量の分を払っておく。手数料も普通の継続検
査の場合には印紙を検査票に貼って堤出するのだが、構造変更検査の場合には手数料
納付書に貼って堤出する。
構造等変更検査申請書は一枚\35 で売っている。これは主なところと、変更になる
ところ(私の場合はバネなので車高のみ)を記入する。間違っていても勝手に訂正して
くれたので、分からなければ適当に書けばよいみたいである。
そして、いよいよ書類完成である。完成したらユーザー車検の受付に行き書類を堤出
し確認してもらう。その際に予約の確認と、前回出した構造変更申請書類を忘れずに
受け取る。
最後にもういちど復習の意味も込めて、ラインの見学を行った。よし完璧だ。準備は
全て整った。 ふと見ると外はなんと晴れてきている。陸運支局はちょうど昼休みに
入ったところだったので私は急拠、車底を洗いに行った。
よし、あとはラインに入るだけである。
chapter7 「OH!ミステイク」
13:00 になったので私はラインにならんだ。もう既に何台かが列を連ねている。
浜松の検査場にはラインは5本ある。このうち4本が普通のライン、もう1本が
車重を計ったりバイクが通ったりするラインである。私が並んだラインは2番だ
った。どうやらラインによって検査の順番が違うようだ。もちろん地域によって
も違うはずである。
最初の難関は同一性等の検査である。検査官が長細いハンマーを持って登場する。
まずホイールの検査。ハンマーでコンコンと叩いている。次にボンネットを開けさ
せられた。エンジンルームを検査したら次に燈火の検査である。ライトは全て検査
された。さらにウォッシャーとワイパーとホーン。最後に室内の検査であった。
よっしゃ第一関門通過!
次は排出ガスの検査。プローブをマフラーに突っ込んで待つ。難なくOK。
第二関門通過!検査票を記録器に入れて結果を記録する。
次はサイドスリップ、スピードメーター、ライト、フートブレーキ、駐車ブレーキ
の検査である。まずはサイドスリップテスターに向かってゆっくりと進む。
この検査はテスターの上をゆっくりと通り過ぎればよい。そのとき!
「コォン」
なんと車高が低くて底 (フロントパフォーマンスバー) を擦ってしまった。
意外とラインの高さは高い。多少の動揺は見せたがどうにかサイドスリップOK。
次はスピードメーターの検査である。ローラーの上に車輪を乗せて40km/hになった
らパッシングをする。これもOK!こりゃ楽勝だ!!私はすっかり調子に乗っていた。
次にライトの光量・光軸検査。これはライトのハイだけを検査する。
まず左「×」あれ?ウソ、、右「×」ええっ、、。
私は冷静さを取りつくろえずに、すっかり動揺していた。それでもブレーキ検査には
合格したのだが、ここでマズイことにミスを犯してしまった。結果を記録する際に
ライトの不合格原因表示を見逃してしまったのである。
それに気付いたのは、次の下回り検査をやっている途中であった。
しまった、しかしもう遅い。下回り検査に合格した後は少しの間ボーッとしてしまっ
た。検査官に聞こうとも思ったが、皆いそがしそうで相手にしてくれそうにない。
どうすれば、、、、、、だが、立ち直りは早いほうだ。
とりあえず、光軸が下に向いてるような気がするので適当に上に向けて再度ライン
に並んだ。その日のうちであれば何度ラインを通っても金額は同じである。
いいシステムだ。目指せライト合格!
chapter8 「テスター屋が欲しい!」
書き忘れたが、浜松にはユーザー車検を受けるの人の為のテスター屋がない。
これはかなり辛い。普通はまず車検を受ける前にテスター屋で検査してもらって、
ある程度調整してから本番を向かえるのが定石らしいが、浜松ではそれが出来ない。
ユーザー車検は検査を断わられてしまうのだ。
さて、2回目のラインが迫ってきた。ラインに入る前に再検査の申告をする。
(そうすると落ちた検査のみを行う) さあ検査だ。
「コォン」
また擦ってしまった。ちくしょー、しかし止むを得ない。合格するため
だ。ライト検査用機械がゆっくりと私の前まで移動してくる。
検査開始。
左「○」よっしゃ、人間のカンとは凄い!! 右「×」うっ、、、、。うそぉ、、、
私は落ち込みながらも、不合格原因を確認することを忘れなかった。どうやら右の
ライトが上と右に向き過ぎらしい。そうか、先程右を上に向けたのは間違いだった
らしい。
まあいい、左が通っただけでもよしとしよう。それにあと1回あれば通るに違い
ない。私は妙な自信を胸に3回目に望んだ。
chapter9 「時間は迫る、気は焦る」
この日はラインに1回並ぶと検査終了までに30分くらい掛かった。現在14:10
くらいである。ラインの終了時間は16:00なのであと2時間弱である。そのとき
「キーンコーンカーンコーン」
なんだ、休憩時間かな?検査官もどこかへ行っているし、ラインに並んでいた人達
も車を降りて居なくなった。どーやら本当に休憩らしい。しかもこの休憩は20分間
も続いたのだった。
ラインがようやく動き始めたのは 14:30。この頃から私は少しの焦りを感じていた。
何しろ私にとってこのラインが全てではないのだ、これが終ったら構造変更用の検査
も受けなければならない。
神に祈る気持ちで3回目。日頃全く信仰していないのに随分勝手なやつである。
左「○」よっしゃ!! 右「×」ドッカァーン、、、、、。
しばし放心・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
まだ右に向き過ぎているらしい。マズイ、マズイことになってきた。
chapter10 「ビンゴ!!」
なんとか気を取り直した私は4回目のラインに並んだ。4回もラインを通ったやつ
の話なんて聞いたことがない。しかし、今やそんなことは言ってられない状況なのだ。
現在15:15 今度が最後のチャンスだ。これに通らないと今日中に新車検証はもらえ
ない。また有休か?上司の顔が脳裏をよぎる。
先程よりも念入りに神に祈る。かなり信仰心も増してきたようだ。これが終わったら
入信するから、などととりあえず言ってみる。
さあ4回目勝負!
左「○」 右「○」
ビンゴォーーー!!!
私は感激のあまりガッツポーズを窓から突き出していた。
いや〜よかったよかった。私は勝利の美酒に酔っていた。
しかし、まだ安心はできないのであった。構造変更用の検査も受けなければならない
のだ。私はウキウキしながら構造変更検査用ラインに車を入れた。
chapter11 「いよいよ」
まずこのラインでは車重が計られた。計ったのは前輪荷重と後輪荷重の2回である。
結果はこれまたビンゴーー!!の合計1000kgだった。アブナイ、アブナイ、
あと1kg重ければ重量税が¥12600余分に掛かってしまうところだった。
ひょっとして検査官がオマケしてくれたのであろうか。とにかくラッキーだ。
ちなみに私の車で人より余分に付いているものはオクヤマの車底補強くらいである。
(念のためタワーバーは外しておいた)
次は、申請した資料のバネがちゃんと付いているのかの検査であった。
前後1回ずつのジャッキアップだ。これは難なくOK!あとは今までの資料を最後
に審査して終わりである。ここまで来れば先程の苦労もすっかり忘れかけている。
もちろん入信するなんてことは微塵も覚えちゃいない。
さて、これでラインの検査は全て済んだので私は事務所の方に戻った。
先程の検査で車検証に「改」が付くことが確定したので、手数料 350円分の印紙を
購入して手数料納付書に張り付けて、窓口に堤出する。あとは新しい車検証が出来
上がるのを待つだけである。
「38番、はたさん。これが新しい車検証です。すべて終りましたのでもう結構
ですよ。」
「ありがとうございます。」
もらってしまえば、実にあっけない。余りにあっけなさ過ぎて、なんとなく何かを
忘れているような気がするほどだ。そんな妙な気持ちを掻き消すように私はゆっくり
と陸運支局のドアを押した。
epilogue
陸運支局の駐車場で旧ステッカーを剥し(紙製なので苦労した)、そこに新ステッカー
を貼った。感慨深い。車検証の「改」の字もヤンキーっぽくてなかなかよい。
(ヤンキーはマル改なんて取らないか。)
ただ、新規扱いなので車検期間が今日から2年間となる。あと一週間残っていた
のがもったいなく思える。改造車検はなるべく遅く受けたほうがお得らしい。
もちろんその勇気があればだが。 私は、全てやるべきことが済んだと確認すると、
ゆっくりと車を走らせた。ルームミラー越しに見える陸運支局の建物がなぜかとて
もなつかしく思えた。そしてそのバックに見える澄みきった空がとても印象的で
あった。
にせものハードボイルド車検小説
「嗚呼、新車検証よ我が手に」
完
注
この話は浜松の場合を題材にしてますので、
各地方車検場によって多少の相違はあります。
車検のデータ
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